5つのovoj

わたしが初めて温又柔さんの文章に出会ったのは、「たった一つの、私のものではない名前」というZINEを読んだことがきっかけでした。
「正しい日本語なんて、ない」
台湾人のご両親の元で3歳のときから日本に暮らす温さんの文章にわたしは「ことば」の意味を強く揺さぶられました。

その温さんがエスペラント語で作詞を手掛けられた楽曲CDが収められている本が宮沢賢治銀河鉄道のサイドストーリー『ミグラード』です。
カスパールでは今繰り返し繰り返し、このうたが流れています。




『ある対象について、強く思えば思うだけ、対象は遠ざかりすべてはよくわからなくなってしまう。愛があっても、なくても。考えれば考えるだけ、かえって考えきれない部分がひろがる。きみと対象とのあいだには絶対的な隔たりだけが、深い谷間としてひろがる闇だけが、きみを呑み込もうとしてぐんぐん成長する。ただ走りつつける列車の前後だけに、まるでつかのまの偶然の橋のように線路がぼうっと現れて、それがきみをどこかに連れてゆく。彼岸、つまり意識の向こう側を見せてくれるか、少なくともそれを予感させてくれる。星が降る夜の平原や海岸に。春、夏、秋、冬、すべての季節と、その止まることを知らないサイクルのむこうに。

昨日に別れて、少しでもよい明日を作りだすために。きみは渡り鳥として飛ぶか、それとも小さな橋を作るのか。いずれにせよ、合言葉は「渡り」となるだろう。』
(ミグラード あとがき 管啓次郎 より一部抜粋)



震災後に出会った本の中のことばたちがカスパールを作り、本当に思いがけないほどのたくさんの人と今までに出逢うことが出来ました。


ミグラードの部屋、残席僅かとなりました。
明日と明日をつなぐ橋の場所へ、お待ちしています。


*ミグラードの部屋*

日時:11月9日(土) 15時〜16時 会場:BOOKSHOP Kasper

〒251-0052 神奈川県藤沢市藤沢536-2 atelier kirigiris 2F S号室

Tel 080-5515-1023 

出演:温又柔(作家)、小島ケイタニーラブ(音楽家

入場料:¥1500(1ドリンク付き)

予約方法・お問い合わせ:Tel 080-5515-1023(アオキ)

もしくは mail:info@kasper.jp まで。 満席になりました

【小島ケイタニーラブ】

1980年生まれ。ミュージシャン。2009年、バンド「ANIMA」としてHEADZからデビュー以降、ユニット「トワイ」の活動や、古川日出男をはじめ様々なアーティストとコラボレーションを開始。

【温又柔】

1980年 台湾・台北市生れ。作家。1983年より東京在住。2009年 自身の体験を投影させた小説「好去好来歌」で第33回すばる文学賞佳作受賞。2011年小説集「来福の家」(集英社)を刊行。エッセイ「失われた『母国語』を求めて」を白水社ウェブサイトにて連載中。http://www.hakusuisha.co.jp/essay/bokokugo.html