ひとり分の座席

人はどれだけの土地がいるかというトルストイの民話がふと思い出された。倒れて死ぬ地面だけが人には必要だ、という話だった。それに似て、教会のなかの、図書館のなかのひとり分の座席があればいい。
これまでの年月、アメリカを皮切りに何度も海外に出かけ、沢山のものを見た。
それは徒労でも、無意味でもなかったが、結局戻るのはひとり分の座席で、そのことを見出すために今までの人生があったのかと思う。

『猫の王国』北條文緒(みすず書房



現在、atelier kirigirisさんにて、ご紹介させて頂いている詩人が送る絵本シリーズに続き、同じくみすず書房から刊行されている「大人の本棚」シリーズをご紹介させて頂くことになりました。
小沼丹、青柳瑞穂、J.M.シング、、
大切な一冊を探しにどうぞお出掛け下さい。




図書館の中の一人分の座席。

それは自分の胸に抱く、神殿のような場所。そこへの道を探して本のページを開く人と、今月はたくさん出逢えそうな気がしています。