妖精ディックのたたかい

家屋敷に憑いている妖精、ホバディ・ディツクの物語は、なんとなく眠れない夜に本棚から取り出すことが多い本。暗いファンタジーの世界は、眠りの世界とつながっている。
わたしも、誰かのゆめの中を黒い犬になって、走りたいです。





かすれた笑い声はますますかん高くなり、それにこたえるように、遠くの空から、なにかがうなるような声がきこえてきた。枯枝をたばねたほうきの先を、風が通りぬける音だった。その音があたり一面に低く鳴りひびくと、身を寄せあっていた妖精たちはふるえ上がって、一目散に逃げ出した。石の円陣の中にいたものどもが、ほうきの柄にまたがってやってきた連中を出迎えようとしていたのは、妖精たちにとって幸いだった。もし追いかけられていたら、とても逃げきれなかっただろう。

ディックはストウ墓地のグリムにかけよって、腕をかした。テイントン村のロブも反対側からグリムを支えていた。グリムは走りながら、悪い夢を見ている犬のように、クーンクーンと苦しそうに鼻をならした。グリムはときどき黒い犬に姿をかえることがあった。
注意を集中していないと黒犬にもどってしまう、などといじわるくうわさするものもあった。