エル・スール

明日夜が明けたら、お父さん、すぐにお墓参りに行きます。
人の話だと、墓石は割れ目から雑草が伸び放題で、花を供えられることもないようです。あなたのお墓を訪ねる人などひとりもいません。母さんは故郷へ帰ってしまったし、あなたには友人がいなかった。噂によると、とても変わった人だったと・・・・・。私は決して変わっていたとは思わなかった。
あの頃、私はこう思っていました。あなたは魔術師で、魔術師というものはいつも深い孤独をかかえているものなのだと。
『エル・スール』アデライダ・ガルシア=モラレス 野谷文昭/熊谷靖子訳 (インスクリプト


ビクトル・エリセ監督による名作、『エル・スール』の原作小説。著者は、エリセの夫人だったアデライダ・ガルシア=モラレス。小説は、映画が制作された時期には未だ出版されていませんでした。

父の秘密を巡る、少女の<南>への旅。

インスクリプトさんのご協力で販売させて頂くことが叶いました。
セビーリャの情景を、わたしたちの目の前に差し出してくれるような野谷文昭さんの訳が本当に美しいと感じる小説です。